人生は、出会いから始まる 私は、1977年のオイルショックのときに卒業しました。武蔵工業大学で電子通信を専攻していましたが、技術系での就職ができずに、先生の紹介で電子機器の小さな専門商社に入社し、営業の道に進むことになりました。最初は、営業職に戸惑いがありましたが、海外の先端技術や先進情報に触れ、日本のトップクラスの企業に紹介できることは実に楽しいことでした。技術者としての違った生きる道を見つけた思いでした。 入社して間もなくバーコードに出会いました。誰でも正確に素早く入力ができるバーコードは、コンピュータの普及と共に不可欠な技術であり、この素晴らしい技術を日本に普及させたいという思いで仕事をしていました。そして、親会社への吸収合併を契機に、このバーコードの経験を活かしてアイニックスを設立することにしました。今日まで45年間もバーコードビジネスを続けられたことは、実に恵まれた人生であり、就職難であった時代とバーコードに出会わせてくれた会社に感謝しています。

ベンチャーで身に着けたスキル

前職では、入社したときの30人から十数年で150人まで急成長し、営業以外に、商品企画、商品開発、広報、マーケティングなど、幅広い経験をさせてもらいました。また、若くして課長、部長となり、事業計画書の策定などマネージメントを勉強することができました。また、急成長した会社が衰退していく姿を間近で見ることができました。このような様々な経験はベンチャー企業だからなし得たことであり、その経験が、今の会社経営に大きく役立っています。

人生というものは、恵まれた就職がハッピーな人生になるとは限らず、私のように苦労した就職が面白い人生になる場合もあるのです。また、小さな会社であったからこそ様々な経験を積むことができ、人より苦労が多かったかも知れませんが、充実した人生を送ることができたと思っています。つまり、就職先で人生が決まる訳ではなく、どの会社であってもそこでの出会いやチャンスをどのように活かすかが重要なのです。また、その後の起業や転職は、人生を更に充実させてくれるでしょう。

努力すること、挑戦することは楽しいことだ

楽と苦労のどっちが好きかと聞けば、苦労と応える人はいないでしょう。しかし、スポーツ選手の方々は、勝利を目指して、日々、厳しい練習の日々を送っています。楽をしたら勝てないこと、他人以上に努力しないと勝てないことを知っているからです。私たちビジネスマンも同じです。楽をして注文を取ることや製品を開発することは難しいと思います。偶然の成功を「たなぼた」と言いますが、棚の下に居ない限り牡丹餅を得ることはできません。棚の下に居るための努力があった結果なのです。

私は商社出身であることから、新しい技術や製品に出会うとワクワクします。そして、これをお客様にソリューションとして提供することに喜びを感じ、それを実現すべく常に努力しています。新しいことに取り組むことは大変なことですが、それを実現できたときの喜びをイメージできるから頑張れるのです。勝利をイメージして頑張るスポーツ選手と同じです。しかし、時には、なぜこんなに次々と新しいことに挑戦するのか思うことがあります。そんなとき、人生とは、修行の場だと思うようにしています。人間は、生まれてから死ぬまで修行を重ね、徳を積み、価値を高めていくものだと考えます。

自動認識技術で新しい価値を創造しよう

 自動認識技術は、バーコード、RFID、生体認証、音声認識、画像認識など様々な技術が開発されていますが、それを私たちの仕事や生活にどのように活かしていくかが重要です。自動認識技術や自動認識機器の開発は、大学や大手企業にお任せして、私たちは自動認識ソリューションを開発することが役割だと認識しています。お客様の課題を自動認識技術でどのように解決するか、しかも、多くのコストと時間を掛けずに実現すれば、最高です。グローバル化によりメーカは淘汰されていきますが、私たちのようなソリューションプロバイダは、ますます必要とされていくでしょう。

 アイニックスは小さな会社ですが、大手企業に負けないワンストップソリューションを提供しています。お客様の立場に立った最適なソリューションを提案し、自動認識機器からソフトウェア、システム、サービスまで提供しています。それができる訳は、一人ひとりが常に新しい技術や製品に取り組んでいるからです。一度に沢山の知識を得ることはできませんが、日々、重ねて行けば、誰でも幅広い知識を身に付けることができます。その知識は、皆さん自身の財産になります。

30周年を迎え、次のステージに

企業30年説は、30年毎の大きな社会変化に対応できない企業があることに由来しています。インターネットは、採用活動、ネット販売、電子取引、ＳＮＳ、ネット放送、ネット会議など、私たちの生活を大きく変化させてきました。これにより多くの企業が生まれた一方、多くの企業が消えていきました。アイニックスは、e-Barcodeシステム、企業モバイルシステム、害獣捕獲監視システムなど、インターネットを利用したビジネスを開発しながら30周年を迎えることができました。

これからの10年では、人工知能の普及により今の職種の半分以上が消えると言われていますので、アイニックスにとっても大きな変革が求められます。これを実現できるのは、若い皆さんたちです。自動認識と人工知能は親和性が高いので、これからはカメラと人工知能による物体認識システムに挑戦したいと思います。また、業務の効率化のためにいっそうクラウド化が進むと思いますので、今、クラウド型倉庫管理システムに取り組んでいます。半歩先を目指すこと、これがアイニックスの成長戦略です。